球団ブランド戦略
2016年 5月 28日(土曜日) 11:56

MLBのある球団は、勝てないシーズンが来るたびに監督・コーチ、選手たちの首を切っていく。首を切っていくフロント陣は、自分たちの保身のためにそのような行為に出る。結果、毎年選手と首脳陣は一からのスタートとなり、同じことを繰り返す。一方、エンジェルスなどの球団は、ソーシャ監督と10年契約を結ぶ、あるいはフロントも10年、20年と同じ人たちがチームのために働く。自分が野球界で働きたいなら、どちらの球団を選ぶだろうか?

もちろん、エンジェルスのような球団も、勝てないシーズンがある。しかし、チームの体制が大きく変わることはない。以前にもこのサイトで述べたが、エンジェルスはファミリー球団のイメージを大事にしている。スプリングトレーニングでは、以前プレーした選手たちをコーチとして招き、現在プレーする選手たちと交流を深める。現役選手たちも、コーチから学べない技術やメジャーでの経験、現役時にするべきことなどを学ぶ。何より、現役選手たちは、球団が引退した選手たちを大事に扱う様子を見て、自分も引退した後にはこのように大切に扱われるのだと安心する。

いつ首になるかもしれない、実力主義のプロの選手たちは仕方がないかもしれないが、コーチ、監督、それにフロントの人たちがそう思っていたら、このチームの5年後、10年後のことを考えてチーム運営にあたれるだろうか? おそらく自身を守ることを常に考えるようになり、本当の自分のやるべき役割を忘れてしまうことになる。選手たちにしても、単年契約であっても、どこかで自分はこのチームに残してもらえるという気持ちがあれば、チームのためにプレーしようという気持ちにもなるだろう。

エンジェルスでプレーしていた時は、もちろん「成績を残せなかったら首になるかも」という危機感はもっていたが、「できる限り、このチームでプレーしたい」という思いも強かった。それはどこから来るのかと考えると、やはりファミリー的な良い雰囲気の球団であるのと、私がプレーした5年間、理不尽なトレード、フロント人事はなかったように思えたからだ。

実際には、私は5年プレーした後に、契約の合意に達しなかったために、マリナーズに移籍にすることになったが、それが決まった時に、GMから直接私に電話があった。通常はおそらくチームを離れる選手に対して、GMから契約の経緯の説明などはないのだろうが、その当時のGM、ストーマン氏からは、電話での言葉があった。これはおそらく、エンジェルスのファミリー的な雰囲気がそうさせているのだろう。現在のGMはヤンキースから来たのだが、エンジェルス式のファイミリー的な仕事をしていることは簡単に想像がつく。

また、ヤンキース、ドジャースなどの古豪球団は、そのブランドを使ってグッズなどを数多く販売して全米中あるいは、国際的に利益をあげる。また、ヤンキースはYES networkというヤンキース専門チャンネルを持っており、ヤンキース・ブランドのますますの確立を目指している。そして、ドジャースは以前このサイトでも取り上げたように、ドジャース・ブランドを利用してワーナーTVと複数年で莫大な独占TV契約をした。この契約が正しい決断かどうかは別として、強力なブランド力がなければ、このような契約には至らなかっただろう。

一般企業でも企業価値を上げるためにブランド力は大事だ。ブランド力を上げれば、それだけ株価も上がる。球団経営であれば、球団を売る際に高く売ることができる。そういう意味では、日本の球団は、ブランド戦略がアメリカよりもできていないように思う。特にオリックスは、阪急からオリックスに身売りした翌年に、ブレーブスからブルーウェーブにニックネームを変え、近鉄との合併時には、バファローズに変えた。ブランド力を高める意味では、ブレーブスで通すことも良かったのかもしれない。そうすれば、プロ野球開設時からのブレーブスの伝統を全面的に押し出すことができる。

また、アメリカ・メジャーリーグでは、球団の歴史を試合前にビデオで流し、昔から応援しているファンにプライドを持たせることができるし、選手にとってもその伝統ある球団に恥じないような立派なプレーをしようとする気持ちを持たせることができる。そういう行為が、球団のブランド力をつくっていくことになる。そのような事は、ニックネームを長期に渡って維持する、テレビや試合前のビデオで繰り返し流すなどの簡単な手法でできる。

アメリカは、もともと歴史の浅い国であるから、その中でベースボールのように伝統のあるスポーツやその中の慣習などを重んじる。一方の日本は2000年近くの歴史があるのだが、それでも野球の歴史を重んじて、それをブランド力に変える事も必要かもしれない。球団を将来売るつもりであっても、そうでなくても、ブランド力を高める事は球団にとってプラスとなる。現在すでにブランド力のある読売ジャイアンツや阪神タイガースなどは、そのブランド力をより強固にして、利益に繋がるべきだし、楽天などの新参チームも、ブランド力を高めて利益を上げていってほしい。それがますますの日本プロ野球界の発展に繋がるだろう。それはアメリカでも同じで、どちらかというと球団ビジネスは人気商売だから、ブランドイメージアップを怠る球団もあるようだが、すべての球団がよりブランド力を高める努力をすることによって、MLBがより強固なビジネスとなっていくだろう。(ビジネス)

長谷川滋利