秋季キャンプのある日本とウィンターリーグに参加するアメリカ
2016年 11月 19日(土曜日) 19:06

よく「オフは野球選手は何をしてるんですか?」と聞かれますが、いろいろです。シーズン終了前から順番に説明していきましょう。

 

まずメジャーの場合、結果が見えているシーズンの最終週あたりで、オフに向けてロッカールームを片付けるヤツが必ず出てきます。個人的にそれはどうなのかな、と思う部分があったので僕は絶対にやりませんでしたけど、球団の本拠地と家の場所が違う選手も多いし、そういう選手は一刻も早く離れている家族に会いたいだろうから仕方ないのかもしれません。「最終戦が終わって2時間後のフライトで帰るんだ」なんていう選手もいましたね。

日本球界の場合はシーズンが終わって即解散、とはなりません。シーズン終了後に2週間前後の休みをはさんで、若手レギュラーと準レギュラー、期待の2軍選手などは秋季キャンプに。ベテランレギュラー陣と2軍選手は本拠地でのトレーニング。といった感じで分かれます。

シーズン終わる前に強化をしようという意味もありますが、首脳陣に交代があった場合、指導者が春季キャンプが始まる前にチームのことを知っておきたい、という意図も大きいです。ここで来季の構想や補強ポイントなどを明確にしていく狙いですね。

この秋季キャンプの有無が日米の大きな差ですが、アメリカにはその代わりに若手の育成と強化を目的としたアリゾナ・フォールリーグや、主に中南米の国々で開催されるウィンターリーグがあります。

ただ、それは日本のようにチーム全体のイベントではなく、前者はシーズン中に試合に満足に出場できなかった若手や、これから伸びそうな期待されている選手が多いですね。なので球団が選手を指名して費用も負担して参加させているケースがほとんどです。地元に戻ってプレーしたいプエルトリカンやドミニカンも多いですね。

この秋季キャンプやウィンターリーグが終わると12月と1月は、クリスマスや正月といった本格的なオフに入ります。日本の場合、年末に納会などが入る場合もありま

すが、メジャーはこの時期にほとんどチームの予定は入りません。そこは家族を優先にするアメリカの国民性からくるものかもしれません。

 

テレビ出演やチャリティ、サイドビジネスは?

オフの過ごし方としては、だいたいの選手が本当にのんびりしているだけだと思います。イベントやテレビ番組などに出ることもありますが、ああいったものは本当に出演が好きな選手の場合ですね。きっぱり断る選手のほうが圧倒的に多いですね。本拠地に住んでいる選手などは断り切れずに組み込まれてしまうこともあり、エージェントに「おらんことにしてくれ」なんて言っているヤツもいましたね。誰とは言いませんが。

逆の例としては、2012年に当時ヤンキースのカーティス・グランダーソン選手(現ニューヨーク・メッツ)が石巻市でチャリティ野球教室を開催してくれました。あれは自分から言い出したケースだと思います。チャリティに消極的な選手もいれば、積極的な選手もいる。それは日米であまり差はないかもしれません。

また、オフにメジャーリーガーはサイドビジネスで利益を出している、なんていう話も聞きます。A・ロッドの不動産の話などは日本でも有名かもしれません。確かに彼は何千ユニットという不動産を所有していているので、報道の半分は本当ですが、かなり優秀なブレーンをつけているのでみなさんが思っているほど本人はそこまで深くコミットしていないと思います。彼をはじめ、メジャーリーガーで投資などで利益が出ている人のほとんどはそんな感じでしょうか。

ただ、中には例外もいます。某古豪で活躍していた投手は父親のビジネスを手伝っていて、「そっちの利益が野球と同じくらいあるから、もう引退してもいいんだけどね」と冗談交じりに教えてくれたことがありました。当時、彼はクローザーでしたから、3-4ミリオン(3.5-5億円)はもらっていたはずです。僕も現役の後半は投資などのビジネスに興味が出てきたので「カッコええなあ。オレもああ言って現役を終えたいな」と思ったものです。

 

自主トレの日米差。アメリカは施設を使い放題!?

年が明けるとスプリングトレーニングが始まります。日本の場合、高校のOBで集まったり、仲のいい選手同士で自主トレが報道されることがありますね。10-15年くらい前はせいぜい1月中旬の始動がメインだったのですが、最近では3が日明けてすぐ動き出す選手も多いです。

僕なんかはオフにはしっかりスイッチを切ってゆっくり休みたいほうなので、「○○選手、1月5日から始動」なんて記事を見かけると「偉いなあ。ちょっと早すぎるんちゃうか」と思っていました。

これはあくまで僕の意見ですが、みんなプロですし、キャンプインまでの10月-2月までは何も球団が干渉しないで、自分で足りないと感じている選手はそれを補うトレーニングをする、でいいと思います。

とはいえ、一応、アスリートですから、やっぱり身体を動かさないと不安も出てくるんです。僕の場合はトレーナーに「どんなに投げたくなっても絶対に2週間はボール持つな」と言われていたので、その時はゴルフをはじめ、テニスをしてみたり、バスケットを取り入れたり、ロッククライミングを体験してみたり、いろいろトライしていました。自主トレというよりメンテナンスのために様々な箇所の関節や筋肉を動かしておく、という意味合いが強かったですね。

もちろん、投げさえしなければ野球のトレーニングでもいいんですが、その後のキャンプでまたグローブつけてボール握って……となるので、どうしても飽きがきてしまうんです。そのために一度、心身ともにリフレッシュしつつ身体のキレを維持する、そういう狙いがありました。

日本も最近は大学の施設ですとか、公営の球場などで自主トレができるロケーションが増えてきたと聞きますが、やはりアスリートの国・アメリカに比べるとまだまだと言わざるを得ません。

というのも、上記で紹介したテニスやバスケット、専門的なマシントレーニングや大きなラップ・プールも含めて僕の場合、大手ジムの「24 Hour Fitness」でこなしていました。ちょうど僕の住んでいる地区には大規模な施設があってそこのプレミアム会員のようなものだったので、だいたいのトレーニングはそこで用足りていました。

それに加えてちょっとだけボールを握りたい時は、近所の学校などに「施設を使わせてくれないか」とお願いしていました。ほぼ100%、許可が下ります。「ぜひ使ってください。もし差し支えなければ選手に声をかけてあげてください」といった返事ですね。向こうにしてみればメジャーリーガーが自主トレに使ってくれるなんて光栄なことです。現役時代、アメリカで何度もそういう待遇というか対応をされるたびに

「ああ、この国は本当にベースボールを誇りに思っていて、メジャーリーガーに経緯を持っているんだな」と実感し、幸せであり、同時にいつまでも緊張感を持てたような気もします。

もっと専門的なトレーニングに取り組みたい場合は、全米に点在する大規模なトレーニングフィールドを利用する、というアスリートも多いです。アリゾナのFISHER INSTITUTEや、フロリダのIMGグループの施設などが日本では有名ですね。そこのトレーナーと個別に契約してる選手もいます。値段はプログラムごとに違うと思いますが、シーズンを通して1万ドル前後でしょうか。

日本にも、例えば南のほうの離島などに、こういったトレーニングに特化した総合スポーツフィールドのようなものを設立できれば、日本のスポーツ界全体がポジティブに動き出すと思うのですが、そのためにはスポーツの垣根を超えた連携や情報とビジョンの共有が必要なのかもしれません。

長谷川滋利(編集ー竹田聡一郎)