投手の肩を守る
2012年 7月 12日(木曜日) 11:26

高校野球の指導者に一番言いたいこと、それは投手の試合での使い方と練習方法です。私たちの高校時代は、肩は消耗品であるとか、肩はもともと投げるようにはできていないというような事はまだ知られていなかった。日米野球などでアメリカとの交流があったことは確かだが、まだまだ技術的なものやトレーニングなどの本当の意味での交流は無かったに等しかった。それが、野茂投手が海を渡り、私を含めてたくさんの日本人選手がメジャーで活躍するようになった今、最新の練習法、トレーニング法や最新野球技術を知る事は簡単になってきた。

アメリカ・メジャーの高い技術を取り入れて日本の野球もかなりの進歩を遂げてきているのは確かだが、1つだけ全くと言っていいほど取り入れられていない事がある。高校での投手起用法だ。それは甲子園という大舞台が関係している。一発勝負の甲子園。それはそこへ到達するための県予選でも同じ事だ。負けたら終わりというトーナメント方式のために、エースを肩が折れるまで投げさせる。そんな勢いで監督は1人の投手を毎日マウンドに送り出す。その一発勝負が多くのファンを引きつけているのは高校野球のいいところである事も確かだ。しかし、そのために無茶な使い方をされたエースたちは、その肩の酷使からその先の大学、プロに進んだ時に故障持ちの選手としてその力を発揮できない事が多い。また活躍できても高校時代の酷使がたたって故障がちになる投手も少なくない。

実際私もアメリカの肩の名医であるドクター・ヨーカムに「典型的な日本人投手の肩をしている」と言われた。詳しく言えば、ほとんどの日本人投手は、投げる時に肩が抜けないように支えるための小さな筋肉「棘下筋(きょくかきん)」がすり減ってしまっている。それは投げ過ぎによって起こる現象である。その筋肉はトレーニングによってすり減る率を少なくする事もできるが、日本の高校生のように投げすぎてはトレーニングをしてもその筋力を維持する事はできない。つまり投球数を減らす事以外にないのである。一日200球を投げる事などはもってのほか。連日100球以上投げる事も厳禁である。

私の高校時代は、甲子園に出場を目指し県予選で準々決勝、準決勝、決勝と連投でするために200球以上を3日連続で投げる練習を数回やった事があった。試合でも土曜日、日曜日の2日間を連投で完投することもあった。本当かどうかは定かではないが、私が通った東洋大姫路で伝説に残っている話がある。現在千葉ロッテでコーチをしている西本聖投手が松山商業時代、練習試合で東洋大姫路と対戦した際に1日2試合完封したという。さすがに私の時代ではダブルヘッターでの2連投はなかったが、昔の高校野球ではそんな事実があっても不思議ではない。私の話や西本投手の話は、昔の事だと流す事ができるが、様々な情報が入って来る現在でこのような話があることは許されない。松坂投手の甲子園での連投、田中マーくんとハンカチ王子の2日間に渡る投げ合いは記憶に新しいところだが、彼らを指導していた監督・コーチは、それだけ投げさせたら彼らの将来に関わるという事を少なからず知っていたと思われるだけに許されないことである。

長谷川滋利